経済と金融と物理と

私は物理屋である。

と書くと、あまりにカジュアルすぎるだろうか?丁寧には、私は理論物理学者である。これは誰 が決めたわけでもない。自分でそう思っているからそうなのだと思う。実際、Caltech – Stanford – – 京都大学と長年、素粒子論を中心として、少しだけ物性物理学にも手を出したりして研究をし てきた。今年の 3 月末には 65 歳になっているからと、退職させられた。(年齢差別ですよねぇ、皆 さん?)だが、これまで続けてきた研究は、このような妨害にもめげず、フルスピードで続けてい る。それが楽しくてしょうがない。

今回は縁あって、株式会社 iBEST の代表取締役会長となった。これは近年、経済・金融の研究 を続けてきたので、その一つの在り方として適切かと考えている。取締役に私の長年の共同研究者 の井上さん、藤原さんを迎えれたし、社長には武井さん、顧問に岩下さんという素晴らしいメンバーを得たことはとても嬉しい。最強の布陣である。

“iBEST”はそのままで正式名称だが、それは “institute of Big data in Economy, Science, and Technology” という背景となる名前から来ている。この名前にある通り、この Big data の時代に、 それに正面から取り組んで得られた研究成果を実践の舞台へ出していこう、またそうしたい様々な 研究者を支援していこうというのが、我々の姿勢だ。

さらには、私が学会長をしている国際学会で “BEST Society” という組織もある。これは日・ 米・韓を中心とした研究者の集まりで、何年にも渡って国際会議を開いて、研究交流を図っている。

話が先走ったが、ではなぜ物理屋を自称する私がこのような活動に取り組んでいるのだろうか? それを理解していただくには、少しだけ昔話をする必要がある。かつて私が学んだ Caltech の素粒 子論研究室には Richard Feynman, Murray Gell-Mann という二人の大御所がいた。彼らは 1969 年にノーベル物理学賞を同時に受賞していた。そして、彼らは素粒子論の研究のかたわら、他の分 野の研究にも従事して、大きな成果をあげていた。Feynman は Space Shuttle Challenger の事故 調査委員会で原因究明に中心的な役目を果たしたり、古代言語の解読、超並列コンピュータのデザ インなどにも活躍したし、Gell-Mann は言語学に精通して、やはり古代言語の解読を行っていた。 またクォークの発見に大きく寄与した George Zweig もいて、彼は神経生理学を研究していた。余 談だが、私は当時、Gell-Mann と日本語の文法の議論になって、負けたことがある。今となっては 楽しい思い出だ。ともあれ、彼らの研究は、実に楽しそうだった。物理屋が長年に渡って鍛えに鍛 えた数理的解析能力、論理性、洞察力をもって、他の分野に切り込んでいく、そしてそこで、旧来 の「専門家」達が思ってもいなかった事実、法則性、ダイナミクスを明らかにする。それはまさに、 理論物理学者の真骨頂である。

ここまで書けば、もう読者の諸氏には話は見えているだろう。私はある時、経済のあるデータに 出会い、そこで見事な規則性を見つけ、経済の研究に意義を見出した。

長くなった。それが具体的に何だったかは、次回の blog に譲ろう。