私のFeynmanさん

私のFeynmanさん

前のブログでは、物理学者の私がなぜ経済・金融の研究をしているかというお話をして、そのきっかけをこの第2 回に書くことにしていた。
しかし、その予定を次回に先延ばしにして、今回は、表題のFeynmanさんについて書かせてもらうことにした。その理由は、読んでいただければ分かる。
私の「育った」京大の素粒子論研究室は英才に恵まれていた。私が配属された研究室には、後にノーベル賞を受賞した小林誠助手(現在の呼称は助教)がいて、我々院生は日々、彼や他の一流のスタッフ達の薫陶を受けた。ともあれ、私に強く印象を残したのはまず彼らを「さん」付けで呼ぶことだった。つまり、「小林先生」ではなく「小林さん」と呼ぶわけだ。これは院生のみならず秘書さんも同様で、みな、「さん」付けだった。
私が思うところあって転校したCaltech では同じ研究グループにFeynmanさんがいた。彼の本\Surely you are joking! Mr. Feynman” (邦題「ご冗談でしょう!ファインマンさん」)やその何冊かの続編はご存知だろうか。そのどれかで、彼は「『さん』(Mr.)』は人の尊称として十分だ」というようなことを語っている。まさにその通り!私も「青山さん」と呼んでいただきたい。彼には直接・間接的に多くの影響を受けた。それはとても書ききれないが、ここに少しだけ記しておく。
あるとき、私が研究に行き詰まり、彼と議論をしたく研究室に行った。彼は実に驚くほど初歩的なところから、私の研究の原点、つまり仮定、研究目的、解析法にじっくり質問をして、私の話を真摯に聞いてくれた。それに答える過程で私は物事が見えてきて、その研究を進めることができた。
そうそう、彼の有名な「いたずら」にも会った。これは私の恥ずかしい話なので、ごく内輪の人間にしか話したことが無いが、この機会に書いてしまおう。彼の講義の一つ「一般相対論」の初回は「今日は第1 回目の講義だから、諸君がどれだけのことを勉強したかチェックしたい。今からいくつかの式を書くから、知っている人は手を挙げるように」と彼は黒板に量子力学の波動方程式、電磁場のMaxwell 方程式から始め、理論物理学のさらに進んだ方程式を書き始めた。それらの方程式を知っていたので、私はずっと手を挙げていたが、彼はふと手を止め「あれ、この式は何かな?僕にも分からないのに知っている人がいる?!」と言った。ふと見ると、彼の指さすところには確かに無意味に複雑な式が書いてある。しかし、私は彼がもう一つの手で指示していた正しい式を見ながら手を挙げていた。しかも、手を挙げていたのは私一人。それからは思い出せないほど、憔悴した。あとで彼の研究室に弁解に行き、彼に謝られてしばらくして、それが彼の「いたずら」だったことに気づいた。
またある時、彼はカリフォルニア大学アーバイン校(U.C. Irvine) にある会議に我々若手を彼のバンに乗せて連れて行ってくれた。この時の写真がこれである。

それは1979 年12 月1 日。というわけで、この2019 年12 月1 日は私の「Feynman さん40 周年記念日」であった。